母の日に
- 酸素飽和度 97%
- 脈 拍 数 83
- 血 圧 119/72
- 徒 歩 2875歩
- 体 重 65.8kg
- 体 調 頗る快調
ベランダから、ふと空を見上げると、雲の切れ間から淡い昼の月が、欠けたコンタクトレンズのように浮かんでいた。
一昨日購入した リリー フランキー著の「東京タワー」オカンとボクと、時々、オトンを二日間でいっきょに読み切ってしまい、母親の愛と別れに胸熱くしている。リリーさんがこの大きな母の愛を、拒絶することなく、命一杯に受け入れ、見事彼の人格形成に花咲かせているように思う。
64歳の私が母のことを話すと、マザコンのようで気恥ずかしいが、「東京タワー」を読んで自分も母に「ありがとう」と言わず、「ウン」とか「アア」とかいう、真に失礼な応答をしていたような記憶がある。それでも私は母に叱られた記憶は全く無い。小中学生を過ごした鳥取の小さな漁村、貧しい時代であったが、母子の情の厚い時代でもあった。卵焼きが美味かった、白いシャツにアイロンが掛かっているのは私だけだった、喧嘩相手が怪我をしているのに、文句を言いにいったのは母だけだった。煮魚の身を取ってくれる時 血合いは血の匂いがするからと外してくれた。浜で鯖の背割りに塩をして、手が真っ赤に赤切れしてた。自分が食べれば良いのに、こちらの皿におかずをくれた。
半世紀も昔の話が、母も景色も昨日のことのようだ。最近はマンションのオートロックのナンバーも忘れがちなのに不思議なことである。「昼の月」を見るたびになぜか母を思い出す。いつも、そっと、控えめで、目立たず、それでいて逞しく、変わることなく、自分だけを見てくれているような、そんなロマンを母の日に64歳の夢追い人は感じている。